この短刀は前掲と全く同じ年紀を切るが、製作法が異なり、従って作風もご覧の通りである。 前者が銑を吹き、これを反射炉式精錬によって鋼とする、いわゆる間接製鋼であるのに対して、これは小型タタラでヒ(けら)すなわち鋼を得る直接製鋼を採っている。 得られたヒの炭素量がいかほどで、冴える鉄になるかどうかなどは、火花を見ただけで経験と勘から判断できる。 自家製鉄で求めるのは、鉄質が敏感でありながら、できるだけ低炭素にという矛盾した要素である。あとの鍛錬は、折り返し回数が問題ではなく、スラグを抜くことに主眼が置かれる。 本作は、地鉄に自然な動きがあり、地刃に沸がよくつき、高低のある焼刃も冴えている。
作品リストに戻る ・ トップページへ戻る